敵前逃亡
ひとりでいい
離れていく痛みに、また泣くくらいなら
最初から手を伸ばしたりなんかしないよ
握られた手をいつまでも握り返せなかったら、
次第に、ゆっくりと振りほどかれた。
当然だ
誰だって返ってくることを期待して、望むだろう。
反応を示さない手に愛想を尽かすのは何もおかしくない
でも互いに想い合って、夢を描いて、幸せを探して。
そんな思い出が付き纏う痛みにはもううんざりだった
人が人を信じて、わかり合うなんて
もう信じたくない
わたしは君が大切だ
ずっと隣に居たい
でもこの想いは、君に伝えるつもりはない
だから手を握ることもない
握った手を君が握り返してくれたとしても、
いつか私から手を離してしまうことをとめられないなら
私は君に、何も望まない。