灰色の空

あした晴天なら

「わかる」を理解する

本当の自分なんて、理解されないんだろう

卑屈じゃなくて本質的に不可能なんだろう

私が満足出来るくらいに私を理解してもらえることなんてないんだ

そうであるなら、理解されなくていい

中途半端に理解なんてされたくない

自ら教えることもなくていい

ただ、本質を理解できないように嘘をついていればいい

 

優しさはかえってこない

見返りを求めては、いけないからだ

 

理解はかえってこない

ひとは優しくないからだ

 

ひどい世界だ、私には向いていない

悲しい世界だ。息がしづらい。

 

 

「わかる」

それ、わかってないってわかってる。

理解出来てないって、しってる

だから、無垢で無知な私を装って、笑顔になるの

私、優しいから、わかったことにしてあげる

私、優しいから、わかってないってこと、理解してあげる

それが全部返ってこないのも、私だけわかってる。

言葉って難しい

「ごめん」なんて言わせたいわけじゃないのに

なんで日本語はこんなにも難しいのだろう

努力家な君の成果を否定したいわけじゃないのに

こんなにもから回る

謝らないでくれ

そういうわけじゃないんだ

そういうわけじゃないんだけど、本当のことなんだ

発言することは私の義務であって、君を責めているのではないのに

君が謝ることで、君と私はまた対等な立場から遠ざかる

でも、

それに安心する私がいて

君もまたそれに安心していて

「やめてくれ」の一言を、

私は今日も言い出せない。

私の世界

「結婚するんですって」

「あそこの家の方が亡くなったわ」

「子どもが出来たのよ」

「あのコンビニ潰れたの」

 

私の日常が崩れていく

小さな頃からの環境が少しずつ消えていく

ずっと、変わらず、いられると思っていた

あの日遊んだように笑っていられると、信じていたかった。

 

私と遊んでくれていた人は私の傍から消えて、

全然知らない顔をして、自分の道を歩いている

 

「私の部屋の漫画あげるよ」

「読まないの?」

「うん、いらない。」

 

「このお菓子好きだったよね?」

「いや、今は好きじゃない」

 

「じゃあ、元気でね」

「もう帰ってこないの?」

「どうだろ、多分ね」

 

私の傍から、大切な人が消えていく

また1人、消えていく。

 

「離婚したんだって」

「え?」

「職も家族も家も、今まで築き上げたもの全て失って、馬鹿ねえ」

 

私の傍で、身内が不幸になっていく

また一つ、昔と変わってしまった。

 

「もう新年会は出来ないかもしれないわねえ」

 

あっけなく、もう会えなくなって

 

 

これからも私の名を呼んでくれる人は減っていく

 

 

「×××××」

 

 

優しいあの手が私の手を引いてくれた

大きなあの手が私の頭を撫でてくれた

父とよく似たあの手で私に色んな知識を与えてくれた

 

そのうち永遠に会えなくなって

それをきっと私は全て見届けることになる

 

私に残されていくのは何だろう

「身内が私の本当の宝物だった」と言える日は、もうこない。

ホームシック

死にたいって思うたび

頭にちらつく君の顔で

涙が止まらない

諦めようと思うたび

頑張ろうって君との約束が

容赦なく首を絞める

それが凶器だと思わせたくなくて

何でもないよ、と言いたいのに

そんな言葉すら言うこともできない

死にたい原因から無理矢理逃げるふりをする

頭が痛む、

胸がいたい

周りの優しい声と、関心のない視線

その狭間で蹲って

帰りたい、と

泣いてしまう。

すべてを投げ出したくて、

誰かの不幸も涙も、本当のところ関係がないから親身になって聞けただけで優しいわけじゃないし、太平洋のような広い心を持って誰とも接せることが出来たのも何処か諦観が強く根付いていたからだった。

向かってくる電車の顔を見て、過ぎ去って行くまでを永遠と繰り返す。

なんて馬鹿な日々だろう、

"飛び込んでしまえば何もかも投げ出せるのに"

そう思っては過ぎた電車から遅れてやってくる風に涙を飛ばされる

ああ、

なんでそれが出来ないんだろう、

なんで生きようとしているんだろう。

君に、

私が見てきたのは、いつも寂しい背中。

私が気にかけてきたのは、いつも悲しい表情。

私が救いたかったのは、いつもの笑顔。

 

私が誰かの為に泣いてしまったのは、君が初めて。

 

私が何度目かの涙を流した後に君が、

「私、辞めないことにしたの。だから、一緒に頑張ろうよ」

そう言って、手を握ってくれた

その時、君の顔が一瞬いつもの笑顔になった。

それが嬉しくて嬉しくて、また泣いてしまった。

「ありがとうね」

私の顔を覗き込む君は楽しそうだった。

 

 

日が過ぎて君はもう随分と以前の明るい表情を取り戻したようだった。

君が笑わなくなったあの日から、どんどん痩せていく君と、昨日の夕飯は何を食べて、つい食べ過ぎてしまったんだとか、ダイエットは2日も経たずに諦めたのだとか、話をしては2人で笑い転げることも出来なかったが、

「聞いて、昨日ね。うな重食べたの」

なんて私の方に振り返った君がそうやって笑うから思わず驚いた顔を見せてしまって、「元気ない?」なんて困らせてしまった。

「ううん、またリバウンドだな〜??」

いつも通り笑ってあげられただろうか

良かった。本当に、本当に良かった。

 

「もういいよ〜」

 

ケラケラと楽しそうな君

それだけで、良い

 

「うん、もういいよ」

 

口に出てしまう。抑えられない涙が落ちてくる。

君は驚いて、それから、ちょっぴり眉を下げて私の手を握る。

 

「ありがとう、」

 

私は、救ってあげられたんだろうか。

 

いや、君が自分の力で這い上がってきたんだろう

君はいつだって本当は強い人なんだ

 

その言葉に救われたのは、私の方だった。

だから、その意味も込めて君に、

 

「どういたしまして」

 

最適解

私には、他の人より少しだけ力がある

それは握力とか物理的なものじゃなくて、要は"器用"だとか言われるもの

昔からそう言われてきたし、自分でも何となくは理解していた

他の人より、柔軟に対応できるってことなんだろうなって。

ただそれは、歳を重ねるごとに疎まれるようになった

"何でも簡単に出来ちゃって凄い、羨ましい"

最初はみんな褒めてくれた

けど、凄く努力したことも、その括りにされてしまった

"生まれた時からの差だよね、比べられたくない"

そう言われてしまうと、どうしていいかわからなかった

何もかも不器用で、"難しいね"とへらりと笑っている人に"それな、出来るわけないよね"と沢山の人が寄っていった

器用って、良いことないな。

周りの目を気にするたびに、手元が狂った

不器用で、何も出来ない方が愛されている

しかし、必ずそうであるとも限らないことを私は知っていた

だからこそ、どうしていいのかわからなかった、口をどう開けばいいのか、恐ろしくなった

器用である私は、考えた。

 

"ぶきっちょ!仕方ないなあ"

少し経って、必要以上に自分の持つ力を出すことをしない世渡りの仕方を学んだ

絵だって、学だって、運動だって、歌だって、なんだって。

周りと同じくらいなら、そうであるなら、きっと。

 

"何が得意なの?"

 

「何だろう?不器用だからなあ。」

 

へらりと笑えば、笑ってくれた

努力だって何だって自分以外には関係ない

柔軟に対応出来るって、こういうこと

 

 

私には、他の人より少しだけ力がある。

すなわち、私は器用である。