灰色の空

あした晴天なら

umbrella

雨の音がぱたぱたと窓を叩く音だけが、静かなリビングルームで鳴っています。

日付を跨いでも尚、目を覚ましたままなのを昔のわたしこそ、何とも思っていなかったのでしょう。今は"明日起きられるかな"、なんて自立した証拠でしょうか。

ああ、いけませんね。また大人になったような勘違いをしてしまいます。

こんな真夜中にひとりなら、少しくらいは呻きをあげて泣くこともできたかもしれません。慣れてしまったように感情がないような涙を流すばかりです。本当は胸がこんなに苦しいのに、私から発せられるものは他人に伝わりにくいのですからめんどうくさい。

こんな文を連ねる今も胸がぎゅう、と痛むのです。それが苦しいように感じるのです。

どうして私の胸は痛むのでしょうか。

どうして泣くのでしょうか。

一体何を得れば私はこんな思いから抜け出せるのでしょうか。

それまで私は誰にも伝えることが出来ずにいるのでしょうか。

 

ぱたぱた

消極的な考えを巡らすのはこんな夜のせいと、何度誤魔化して来たんでしょう。

自分が落とした涙の跡に気づかないふりをして来たんでしょう。

鼻水をすする音さえも聞かせてはいけないのだと、何を怖がっているのでしょう。

「明日起きられないよ」

掠れた声がようやく聞こえて、

私は仕方なくといったように布団へ入るのです。

「おやすみなさい」

このままずっと起きなければ、幸せなんでしょうか。

好きなこと

2年前から、暇を持て余すばかりだった私の生活が常人よりも遥かに忙しいものになってしまいました。充実感や絶望、嘆いたり病んだり、ほんとうに忙しいのです。

そんな日々の中に、私の好きなものは置いてけぼりにされてしまったようでした。

久々にしっかりとペンを握っても、前は勝手に動いた手が何の反応も示さないのです。どうしたものかと無理やりガリガリと描いてみても、私の絵はこんなものだったかと、違和感に思わずノートを閉じてしまいます。

好きなことに不快感を覚えたのは初めてでした。

私は何が好きだったんだろうと思い返しても中々浮かんではきませんし、嫌いなことを辿る方がよっぽど簡単です。当然のことなのかもしれませんが、私には異質な感覚に違いはありません。

私の好きな何かはどこかへ忘れてきてしまったようです。

ノートに描いた私の絵を、勢いに任せ、怒りをのせた黒塗りにすれば

嫌いな何かを、不快感を、拭えないでしょうか。

ユリの花

死にたいと思ったことはありますか。

 
飛び降りたり、切ったり、溺れたり
そんなことを想像したことは?
 
私はあります。
ええ、何度も、何度も
身内の棺を見る度にそう思っていました
黒いハンカチを握り締め、骨になった姿に泣き崩れる親戚を、私の時もこんな風に泣いてくれるのかと眺めるのです。
 
何故死にたいのかと聞かれれば、答えようにも言葉が見つからないのです
"死にたいと思ったから"
そんな言い訳のような文しか出ません
 
それでも私は思うだけ、想像するだけ。
実行に移す勇気なんてものは持ち合わせていませんし、心配してくれる友人もいない
所詮私はそんなものなのだと、言い聞かせては毎日のうのうと生きるのです。
 
いつか棺桶に勝手に入るその日まで。

ともだち

「大丈夫だよ〜」

へら、と間抜けな顔を見せる友人が私には耐えられないほど悲しく見えた
何で大丈夫なの、と口を開きかけて、彼女がにこりと笑うから何も出なかった
奥歯がギシ、と音を立てた私の酷い顔を見て「優しいねえ」なんて。
 
「ばか」
 
そう言ってやることしかできなくて。
 
己の無力さに一生の絶望を知って、君が流した涙の1%分くらい泣いた
そんな醜態を晒す私に何を感じたのだろう
 
「そうやって泣いてくれるから、私充分だよ」
 
ぽた、と一粒だけ頰を伝った君の初めての涙に、
私はもう喚くしか術がなかったのだ。

通勤ラッシュ

毎朝、7:30ごろの電車に乗って通学するのですが、平日はなかなかに混み合っている時間帯でして学生の私は今日も汗をかいて眉間にシワを寄せたサラリーマンにぎゅうぎゅうと潰されています。

別にそれに文句を言おうとは思わないのですが、あまりいい気分ではありません

ただこちらに見向きもしないところを見ると、それほど切羽詰まった生活なのだろうと黙って下を向いてしまうのです

何も流れてこないイヤホンは、飄々としているように見せるため…

いえ、冗談です。

天国地獄

わかりきった天国よりも地獄の先に何があるのか

それが気になってしまって何もないかもしれないという不安を泣いて誤魔化しながら

わたしはその先を祈りながら進むのです。

  途中で引き返し、天国へ行くことも出来ましょう

 なぜわたしは地獄を選ぶのでしょうか

 泣いてまで、わたしはどうして期待するのでしょうか

 何もないかもしれないのに

 そこまでする価値が、本当に待っているのでしょうか

 

   ええ、ええ、皆あったとは言うのです

ただその価値は自分でしか決められないのです

だからわたしは

それに辿り着くまでに何を感じ、経験したかで

地獄の先にあるものがガラクタか宝か

決まってしまうことを知っていました。

その道中、先が見えず志が折れてしまいそうになるような苦しいことがあるのです

それを感じる度に早く死んでしまおう、

早く天国へ行ってしまおう、と甘えたがるのです

   わたしたちは最初から茨の道に立たされています

しかし、天国か地獄か

どちらを選ぶかは個人に委ねられているのです   

 難儀な生き物です

 幸せになりたいと叫びながら

どうして地獄を進むのでしょう

その地獄の先に、天国以上のものがあると信じたいのでしょうか

 

わたしは地獄を選びました

それに耐える度胸も根性もありません故、ひとりで泣いて後悔するのですが天国に行こうと足を引き返そうと思っても、今まで進んだ地獄を戻る勇気さえもわたしは持ち合わせてはいません

 

進む先に何かがあろうとも、地獄は何処まで行っても地獄なのです

呻き声をあげながら、どこまで這っていけるでしょうか

 

地獄はまだまだ続きます

わたしはまだまだ若造なのです

  

蜘蛛の糸や、わたしはそんなもの

今更受け取りはしませんぞ。

涙腺大崩壊

私が声を出して、人の前で涙を見せないのは

泣くのが嫌だから

 

どうして泣くのが嫌なのかというと

ひとりで泣くのが嫌だから

 

それはつまり一緒に泣いてくれる人がいないから

 

ひとりで嗚咽交じりに泣いたとき

私は悲しいと思った

 

涙の理由の中に、その感情があることを知った

 

そして友だちはたくさんいても、

一緒に泣いてくれる友だちはいないのだということを

どうしようもなく理解した

 

私は寂しかった

 

誰かの前でその泣き顔を見せたことが一度もないなんて

人間らしくないと、笑われたから。