灰色の空

あした晴天なら

ヒーロー

やりかたったことが、やりたくないことに変わった

何故やりたいと口にしてあんなにも努力したのか、過去の自分にそれはそれはもう泣かせるくらいにまで問い詰めてやりたい

まあ、結局のところ私はそれが好きなわけではなかったのだろう

自分の高くなってしまったプライドの行く場を探していて、ちっぽけな能力を発揮できる場がたまたまそれであっただけだ

上手く利用していたつもりのそれも、今となっては重荷にしかならない

あんなに輝いて見えた楽器も、ステージに縛り付ける足枷へ変わっていった

吹けない苛立ちを文句に変えたのも、きっとこれ以上私がその場で能力を発揮できる自信を失ったからだろう

ステージにいる理由も資格もない

それなのに、どうしてあんなにも、私のやっているあの楽器はステージの端で小さな響きを届けようと魅力的なのだろう

好きじゃないはずなのに、

小さな能力しか持ち合わせない自分を誤魔化すように慢心して募るプライドを必死になって守った

下手な私であることは、居場所を失うことと同義だった

ステージの上は私だけの世界だ

私が主役の、唯一無二の場所だ

きっとそれが、原因でもあったんだろう

 

 

 

楽しかった、というにはあまりに後ろめたい

目を瞑れば、熱いくらいの眩しいライトに照らされて、大きなその空間に埋め尽くされた観客たちが猛然と私への拍手喝采を浴びせるのだ

その時の高揚感は生涯忘れることはない

だからこそ私は胸を張ることができない。

 

 

 

辛かったのは何故だろうか

自分のキャパを超えた練習時間だったからだろうか

超えられない壁があることを知ったからだろうか

誇大妄想が過ぎていたことに気付かないフリをしていたことを認めたからだろうか

私は此処でも特別になれないのだという現実に突き落とされたからだろうか

きっとどれも正解で、事実だ

免罪符にした楽器が、途端に恐ろしくなった。

 

 

 

それを持つ手が震えた

息を吸った胸がぎゅう、と苦しくなる

ひらけた窓からは今日も眩しいくらいの狭い空が瞳の奥を揺らした

 

「さいなら」

 

小さな希望を、何年も、信じていたんだ

それはきっとこれが、好きだったから。

ならば、もういいだろう

 

「私のヒーロー」

 

思い残すことはもうない

もう、ないよ 

 

"わたしのすべて"は、箱の中で。

灰色の空

例えば、あなたを深く理解できたとして

私に何ができるのかというと、それは意外と多くありません。
それは、空が何故青いのかを理解するのと大した差はないからです。
眺めるだけ、憧れるだけ。
いくら手を伸ばしたところで空へ手が届くわけではなくて、何故あなたが悲しいのか分かっても、何故空が青いのか理解しても、私に何が出来るわけでもないのです。
 
なので、たとえ空が灰色だったとしても
あなたが泣き止む理由にはなりません。